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2017.06.04 (Sun)

生前譲位のための「皇室典範改正不要」な4つの理由

生前譲位に関連し、今国会にて、生前譲位特例法ではなく、皇室典範見直しで対応すべきという意見表示をされた与野党議員が存在した。

―― 参考情報 ――――――――――

民進党・枝野幸男氏、譲位特例法案採決を棄権「典範改正が筋」
http://www.sankei.com/life/news/170602/lif1706020048-n1.html

生前退位について 皇室典範改正の議論をすべき 細野豪志
http://www.huffingtonpost.jp/goshi-hosono/emperor-abdication_b_12463996.html

生前退位は皇室典範改正で 社民党
http://www5.sdp.or.jp/topics/2017/03/03/%E7%94%9F%E5%89%8D%E9%80%80%E4%BD%8D%E3%81%AF%E7%9A%87%E5%AE%A4%E5%85%B8%E7%AF%84%E6%94%B9%E6%AD%A3%E3%81%A7/

石破茂氏、譲位の法整備で皇室典範改正を主張 女系天皇の追求も
http://www.sankei.com/politics/news/170131/plt1701310038-n1.html

―――――――――――――――――

こういった反日議員が主張する、生前譲位のための「皇室典範改正論」、裏があると普通は考える。

自民党議員の中に、これに同調する議員がおられる。残念なことだ。

しかし、皇室典範改正作業、そう簡単ではない。テクニック的には、かなり難渋する作業だそうだ。

―― 参考情報 ――――――――――

皇室典範はガラス細工だった! 称号は? お住まいは? 一つ変えれば玉突きで… 法改正作業は難航も
http://www.sankei.com/premium/news/161010/prm1610100021-n1.html

―――――――――――――――――

つまり、検討ミスがあった場合、皇室解体・消滅の根拠とされかねないリスクがあるのだ。


次に、現皇室典範は、生前譲位を禁止する前提でつくられたとの説を紹介する。

||||| ここから引用開始 |||||||||||||||||||||||||||||||||||

https://news.yahoo.co.jp/byline/tagamiyoshikazu/20160719-00060151/
なぜ皇室典範は生前退位を認めていないのか 田上嘉一 

このように天皇が、誰かの意思によって地位に祭り上げられたり、逆にその地位を逐われたり、または自らその地位を譲ることにより院制というかたちで権勢をふるったりするようになると、社会は混乱する。「天に二日無く地に二君無し」。そのように憲法の起草者である伊藤博文たちは考えたわけです。
また、明治日本は、「神武創業の始めに立ち戻る」として王政復古を訴えているわけですから、譲位が慣例となる以前の、上古の天皇に戻るべきであるというように考えていたわけです。そのためには譲位を認めるわけにはいかなかったわけです。

伊藤は、帝国憲法と旧皇室典範の草案に先立ち、1887年(明治20年)10月15日、井上、伊東、金子ら東京高輪の伊藤邸で両草案について討議しています。この「高輪会議」にて、井上らは譲位を認めることを主張しますが、伊藤は、「又一たび践祚し玉いたる以上は、随意に其位を遜(のが)れ玉うの理なし。抑継承の義務は法律の定むる所に由る」として、これを否定しています。

つまり、「古代より譲位は数多く行われてきたのだからむしろ日本の皇室の特徴であり伝統である」という考えに対しては、伊藤は、「いやいや、それはあくまで例外が根付いてしまった結果の悪しき慣例である。天皇というものはそもそも終身制であって、そう簡単にコロコロ変わっては問題である」という認識なわけです。
明治日本は、天皇を中心とする中央集権体制です。その天皇の地位が不安定となれば、政情、ひいては国家の屋台骨が揺らぐ可能性がありますから、皇室典範は生前譲位を禁止しているわけです。これは卓見であったといえるでしょう。

||||| ここまで引用 |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||


続いて、渡部昇一と中川昭一の対談本「皇室消滅」のまえがきにて、明治時代の偉大な政治家、井上毅が、日本の伝統の叡智を駆使、「男女差別の次元とはまったく無関係というスタンスで、男系男子継承以外に皇統維持の方法がないという理由で、男系男子天皇だけしか皇位を継げないように皇室典範を設計」したと、渡部昇一が述べている。

||||| ここから引用開始 |||||||||||||||||||||||||||||||||||

井上毅とは、明治日本の法制官僚として絶えずトップにあって、皇室典範。明治憲法・教育勅語の主起草者として、その碩学ぶりとともに、日本の近現代史に不朽の名を遺したことは、誰でも知っているとおりです。しかし、熊本藩の武家に生まれ(一九四三年)、神童の誉れ高く学の道に入り、明治維新後は政府の官吏としてフランスに留学し(一八七二~三年)、ヨーロッパ憲法・法制に通じること当代随一と言われながら、井上毅が独自の法思想を構築したことは、あまり知られていません。
それは、洋行した、当時の俊英たちの多くが西洋かぶれになっていったのとは逆に、井上毅は「旧慣の尊重」を重視したことです。そればかりか、フランス留学中にルソーの著作を読み、日本で最初に「矯激な革命哲学者」ルソーを批判したことでも、その抜きんでた英邁さは、余人の及ぶものではありませんでした。

このため、欧米型の憲法、法制度を導入するに当たって、祖先の叡智の結晶たる伝
統と監修を”法”として考え、この”法”に違反しない”法”に沿った憲法と法律を策定することに腐心したのです。日本人の多くは、伝統や監修は、打破すべきものとしばしば考えがちですが、それを重視したり、優先すべきだとの考えは、何か旧弊固陋な頑固おやじな感じがします。

中略

政治は、古代の専制的な王様による「人間(権力者)の意思による政治」という野蛮から、「(伝統・監修を含む)”法”による政治」という文明に進化したのですから、ある政治家や世論調査とかの意思だけにゆだねる、伝統と慣習に反する政治の改変は、政治の退行です。これでは、日本の美しき文明社会が、伝統の自壊の中で崩落していきます。政治の要諦は、祖先と共有する完成の重視を欠かさないことで、皇室を護持せんとしてきた祖先の感性と同じ感性に基づく、皇室を護持せんとしてきた世論だけが世論として考慮に値するものといえます。
ともあれ、近代以降の日本に再び誕生することのない、井上毅という偉大な法制学者が、三年間もの時間をかけ、多くの専門家の意見を徴しながら、心血を注いで起草したのが、皇統の永遠(無窮)のために皇室二千年の伝統の真髄を明文化した「皇室典範」(一八八九年)です。現在の「皇室典範」(一九四七年)は、敗戦後、GHQが強制した憲法の改変にともなって、それに便乗する形で、日本側の左翼学者たちが、改悪したものですが、それでも井上毅の基本思想は、骨と皮になりましたが、かろうじて残りました。それが男系男子天皇制度です。GHQも、その内部文書から、男系男子天皇制度を初めから、支持していたのが、明らかになっています。
さて、明治皇室典範には、この「意思」の排除が明確に書かれています。
「皇室の家法(皇室典範)は祖宗(天皇の皇祖神と神武天皇以来の百二十代以上
の天皇)に承け子孫に伝う……臣民(小泉首相や国会の意思)のあえて干渉するところにあらず」(カッコ内渡部)

しかし、ご存知のように、その首相公選制への執着と関係があるのかどうかは知りませんが、小泉純一郎首相は、首相になった二○○一年四月直後から、この皇室典範を根本からずたずたに引き裂き、皇室伝統のすべてを破壊し、”皇室の生物学的な自然消滅による廃止”を計画してきました。二○○五年の首相の私的諮問懇談会「皇室典範有識者会議」は、その表に出した仕上げの前段で、小泉首相が国会に上程しようとしているする、皇室典範の改正法案は、その後段に当たります。

井上毅が、女性天皇を禁止にして、男系男子天皇だけしか皇位を継げないようにしたのは、男女差別の次元とはまったく無関係で、それ以外に皇統維持の方法がない、それだけが理由です。なぜなら、女性天皇は伝統に従えば、けっしてご懐妊(ご結婚)ができませんし、また、もしご結婚されれば、その皇子、皇女は女系天皇として即位されることになり、男系主義に正当性を持つ天皇制度そのものを空中分解的に自壊させることになるからです。
とくに、井上毅は、女性天皇が皇婿をとられ、もしそれが臣下(民間人)であれば、姓があるので、その皇子、皇女は、この「父親の姓の子孫」となり、皇統が断絶することを恐れたのです。今日の遺伝学・生理学における染色体の研究から、この井上毅の懸念が”科学的な真理”であるのが証明されています。つまり、女性天皇がご結婚されると、その瞬間、皇統が断絶し、シナと同じく王朝が変わるのです。二千年も続いてきました、人類史に例のない世界最高の天皇制度の終焉です。

女系天皇制度の新奇な導入とは、皇統の断絶であるばかりか、コミンテルン・テーゼに基づく天皇制廃止の秘策である以上、絶対反対なのは当然ですが、この女系天皇制度は、愛子内親王殿下に皇位継承権を付与することによって、必然的に発生するのですから、愛子内親王殿下の天皇即位の可能性のある、いかなる皇室典範の改悪にも反対です。しかも、愛子内親王の、これからのお幸せなご生涯を祈っている一国民として、愛子内親王殿下が大統(天皇位)を継がれることに、畏れ多くも、賛意を表すことは、けっしてできないのでございます。

皇統を護るのに、奈良時代、称徳天皇に宇佐八幡神社のご託宣をもって、姉(法均尼)とともに諫言した和気清麻呂と志を同じくするものです。
中略

万世一系の皇位の無窮のために、国民の皆様もどうか、私の真意をお汲み取りいただき、(女系制度とともに)女性天皇制度の導入にこそ絶対反対の声を大きくあげていただきたい。そして、貴種の旧
皇族の方々に皇籍復帰していただき、そのあとに、その中から男系男子天皇を擁立する、皇統を護持するたった一つの方策を、絶大に支持していただきたいと思います。

以下略

||||| ここまで引用 |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||


かくいう私は、譲位表明がなされた当初は皇室典範改正で事足りると考えていたが、生前譲位特例法での有識者会議での検討、政権がとった対応、そして本稿出稿にあたり、得た情報などを吟味し直し、生前譲位を「皇室典範見直し」と関連づけてはならない、と考えるに至ったのである。

政権が特例法で対応しようとしたのは、皇室維持のための叡智が結集した「皇室典範」の設計思想に沿うと考えるのである。

ここで、そう判断するに至った、本稿で紹介した四つの理由を再掲する。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

生前譲位を「皇室典範見直し」と関連づけてはならない四つの理由


・生前譲位について、(逆指標としてみなされる)野党議員および石破茂が特例法ではなく、「皇室典範見直し」で対応しようとした

・文言テクニック的に、生前譲位を「皇室典範に挿入すること」は不可能?

・現皇室典範は、生前譲位を禁止する前提でつくられている

・明治時代の偉大な政治家、井上毅は、(男女差別の次元とはまったく無関係というスタンスで、男系男子継承以外に皇統維持の方法がないという理由で)男系男子天皇だけしか皇位を継げないように皇室典範を設計

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

よって、生前譲位条項を皇室典範に新設すべきとする、皇室典範改正派の議員は、皇室解体論者・ないし破壊論者であるとみていいだろう。

さて、本稿で示した全貌については、つい最近になって理解したことであり、自分の勉強不足を恥じている。

皇室の安寧を維持するため、我々は、先人の叡智にまず学ぶ必要があることを報告し、本稿を終える。


以上

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Comment

男女差別の問題と、男系のみで続く万世一系の皇室をいっしょの次元で語る者は、概ねバチカンの法王が男性のみということと、キリスト教における女性差別、背教者、異教徒、同性愛者、異性装者は殺せという差別に対しては言及を避けます。
今、日本国内で、キリスト教徒のパーセンテージと部落出身のパーセンテージは等しいそうですね。
立后してない美智子は、キリスト教の洗礼を受けているのを隠しているそうです。
 |  2017.06.04(日) 10:10 | URL |  【編集】

Re: タイトルなし

> 男女差別の問題と、男系のみで続く万世一系の皇室をいっしょの次元で語る者は、概ねバチカンの法王が男性のみということと、キリスト教における女性差別、背教者、異教徒、同性愛者、異性装者は殺せという差別に対しては言及を避けます。
> 今、日本国内で、キリスト教徒のパーセンテージと部落出身のパーセンテージは等しいそうですね。
> 立后してない美智子は、キリスト教の洗礼を受けているのを隠しているそうです。

なるほど、そういう視点でみてみます。
バチカンを多面的に眺める必要がありそうです。
管理人 |  2017.06.04(日) 13:12 | URL |  【編集】

素晴らしい記事をありがとうございます。

にしても、管理人様ほどの方でも、この問題を最近勉強なさった、ということに今日の日本の危機を感じざるを得ません。
大方の人間は、保守派であっても、皇室問題は女性週刊誌にまかせておけばいい程度にしかとらえていらっしゃらないのではないか。
事実、そういう側面もありましたが、この大方の無関心のせいで、
あれよという間に、2600年間、皇統維持のために心血を注いできた英明な祖先の知恵が、
皇室内部も含めた反日勢力に破壊されてようとしているのではないか、というところまで来てしまいました。

男女平等、人権尊重、差別撤廃、などの近代のうわつらだけのイデオロギーが大好きな国連までが日本の皇統に口を出し、国体が破壊されようとしています。
日本の伝統的な国体には口を出し、ローマ法王には女性がなれないことには口を出さないこの片手落ち。
そして、それを積極的に活用しようとしている輩(日本人!)がいるという現実。
本当に、ゆゆしきことです。
namo |  2017.06.05(月) 14:17 | URL |  【編集】

Re: タイトルなし

> 素晴らしい記事をありがとうございます。
>
> にしても、管理人様ほどの方でも、この問題を最近勉強なさった、ということに今日の日本の危機を感じざるを得ません。
> 大方の人間は、保守派であっても、皇室問題は女性週刊誌にまかせておけばいい程度にしかとらえていらっしゃらないのではないか。
> 事実、そういう側面もありましたが、この大方の無関心のせいで、
> あれよという間に、2600年間、皇統維持のために心血を注いできた英明な祖先の知恵が、
> 皇室内部も含めた反日勢力に破壊されてようとしているのではないか、というところまで来てしまいました。
>
> 男女平等、人権尊重、差別撤廃、などの近代のうわつらだけのイデオロギーが大好きな国連までが日本の皇統に口を出し、国体が破壊されようとしています。
> 日本の伝統的な国体には口を出し、ローマ法王には女性がなれないことには口を出さないこの片手落ち。
> そして、それを積極的に活用しようとしている輩(日本人!)がいるという現実。
> 本当に、ゆゆしきことです。


お褒めいただき恐縮しております。

本稿については、タイミング的には、首相が特例法で対応するとコメントした際に出稿すべきものでした。
渡部昇一先生は、生前、特例法で対応する根拠、特例法の骨格等について首相にお示しになられたのではないかと予想します。

ここ数年間で、歴史書中心で1000冊は読んだ感じですが、それ以前のノンポリ状態を、反省しております。
皇室問題については、あまり注目されていませんが、中川八洋先生の本に、現状打破のヒントが書かれていると見ております。
今後とも宜しくお願いします。
管理人 |  2017.06.05(月) 17:36 | URL |  【編集】

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